旅館業法場の宿泊施設の設置場所が学校等施設の敷地の周囲おおむね100m(約110m)の区域内にある場合には、宿泊施設の設置によって清純な施設環境が著しく害されるおそれがないかどうかについて、保健所から学校等を所管・監督する関係機関に「意見の照会」をします。
「意見の照会」に関しては旅館業の手引きなどを見てもどのようなことをするのかはあまり詳しく書いておらず、物件を選ぶ際にかなり心配される方が多いです。
「意見の照会で許可がおりなかったら怖いから学校のそばではやめておこう、、、」
なんて考えていませんか。
実は「意見の照会」で不許可になる事例なんてほとんどありません。
本当のリスクはそこではないのです。
今回はこの「意見の照会」について解説してみたいと思います。
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意見の紹介が行われる場合
旅館業の許可を申請するときに必ず保健所から「意見の照会」が行われるわけではありません。
「意見の照会」が行われるのは宿泊施設のおおむね100m以内に旅館業法や条例で定められた施設がある場合にだけ行われます。
旅館業法で定められているのは以下の施設です。
学校教育法上の施設
- 幼稚園
- 小学校
- 中学校
- 高等学校
- 中等教育学校
- 特別支援学校
- 高等専門学校
児童福祉法上の施設
- 助産施設
- 乳児院
- 母子生活支援施設
- 保育所
- 幼児連携型認定こども保育園
- 児童厚生施設
- 児童養護施設
- 障害児入所施設
- 児童発達支援センター
- 情緒障害児短期治療施設
- 児童自立支援施設
- 児童家庭支援センター
都道府県(保健所を設置する市や区については市または区)の条例で定められるのは以下の施設です。
条例で定められる施設の例(各自治体によって異なります)
- 主に児童が利用する図書館
- 主に児童が利用する博物館
- 主に児童が利用する公民館
- 主に児童が利用する公園
- 主に児童が利用するスポーツ施設
このような施設があるかどうかを物件選びの段階でチェックします。
施設に関して分からないことがあるなら許可申請の専門家に現地調査を行ってもらうのがいいでしょう。
意見の照会は何をするのか
「意見の照会」は、保健所から物件の詳細についての情報が送られます。
この場合役所によっては、図面を1通余分につけなくてはならないところもあります。
物件の詳細が送られてきた施設の管理者は基本的に不許可にしろと意見することはありませんし、意見の照会で不許可になった事例は私が知っている限りではありません。
ただし、「意見の照会」で施設の管理者側から条件がつけられることはあります。
例えば「ネオンの色を変えてほしい」とか「物件に目隠しをつけてほしい」などです。
こうした条件が提示された場合には素直に従いましょう。
「学校や児童施設の側で不許可になることはないから民泊を始めよう!」
と思った方はちょっと待ってください。
学校や児童施設の周りでは旅館業法上の施設よりももっと気遣うべき存在がいるはずです。
そうです、近隣住民です。
あなたに子供がいて、学校回りで不特定多数の外国人が訪れる施設を運営しようとしている人が現れたらどうしますか?
やっぱり反対しますよね。
実際、近隣住民の反対にあって許可がおりなかった例も多いです。
民泊に関して「意見の照会」がかかるような施設を避けるのは、
・意見の照会に時間がかかること
・近隣住民の反対のリスクを抑える
といった理由です。
「意見の照会」がかかる場所というのは、それなりのリスクがあることを覚悟してください。
意見の照会がある施設をどうやって調べるか
学校や図書館などは地図を見れば分かりますが、最近ではビルの中に保育所や児童施設があったりしてかなり分かりづらくなっています。
こうした場合にはどうやって調べるかというと
うちの事務所ではゼンリンなどの住宅地図を片手に全ての建物とテナントをチェックしています。
半径100mを調べるのは意外と大変です。でもこれぐらいしておかないと許可取得までに思わぬ時間がかかってしまいますので必要な作業ですね。
お目当ての物件があれば周辺施設の調査は事前にやっておきましょう。
台東区の保健所では旅館業許可の申請件数が多いので、ブルーマップにこうした施設がマークされています。
保健所にいって申請の相談をした時に「意見の照会」が必要な施設をあらかじめ教えてくれるので非常に助かりますね。
旅館業申請を多く扱っているところでは最初に管轄の役所に問い合わせてみてもいいかもしれませんね。
意見の照会を必要以上に恐れない
以上述べてきたように近くに学校等の施設があって「意見の照会」が行われるからといって旅館業の許可を取得できないわけでありません。
許可が取得できない場合というのは宿泊施設が「周辺環境に著しく有害であるとき」ですからね。
一定のリスクがあることを認識していれば、「意見の照会」は旅館業の許可申請においてそれほど怖いものではありません。
まずは近隣住民の理解をきちんと得るということが大事ですね。