営業の制限なく合法的に安心してAirbnbを行うためには簡易宿所営業の許可を取得しなければなりません。この許可を取得するためには旅館業の施設としての構造・設備を整えて、さらに建築基準法と消防法にも適合させる必要があります。
こうした厳しい条件をクリアするためには物件選びが何よりも重要になってきます。
物件選びでは
- 用途地域が旅館業許可がおりる場所であること
- ゲストが来やすい立地であること
- リフォームが可能であること
- なるべく階数は抑えること
- 検査済証が発行されていること
がポイントとなってきます。
不動産投資物件を探すのとは全く違う観点での物件選びになりますので、Airbnbに関しての物件の選び方についてマニュアルにしてみました。
これを読んでいい物件を探してみて下さい。
Contents
1.契約形態をまず決める
まずはAirbnb物件を探す前に「所有物件」で行うのか「賃貸物件」で行うのかを決めましょう。
以下のメリット・デメリットを読んで自分のスタイルにあった契約形態を選択します。
「所有物件」のメリット・デメリット
メリット | デメリット | |
所有物件 |
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賃貸物件 |
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民泊を始めやすいのはやはり所有物件です。
賃貸物件の場合には、物件オーナーの転貸許可、管理規約、リフォームの許可など超えるべきハードルが多くなり、それだけ物件探しは大変になります。
ただし 初期費用やその後の環境の変化への対応の面では賃貸物件が有利になります。
物件を購入して民泊を始める場合には初期費用として数千万円かかることが普通です。民泊をする場合は住宅ローンが使えませんので、創業融資などの事業性のローンかアパートローンなどの不動産投資ローンを使用することになります。自己資金もそれ相応のものが求められます。
賃貸物件の場合は民泊を始める場合数百万ほどあれば民泊物件の運営を始めることができます。創業融資などを活用すれば自己資金100~200万円ほどでも始めることができる可能性はあります。
一部屋のみで民泊運営を行なうような小規模なものであれば費用回収の面で賃貸物件を選ぶことになると思います。
2.物件のタイプを選択する
物件のタイプには以下の3つに分かれます。
- 戸建住宅
- アパート、マンション、ビル1棟
- アパート、マンションの1室
戸建住宅
戸建住宅とは一軒家のことです。一つの敷地に一世帯が居住する住宅のことです。
この物件のタイプは
- 外見で他の民泊施設との差別化をはかることができる
- Airbnbの利用者に人気が高い
- 立地や設備を整えれば高額な宿泊料の設定も可能
といった特徴があります。
ただし、旅館業の施設として改修するコストがかかる点に注意が必要です。
アパート、マンション、ビル1棟
1つの建物に複数の部屋が入っている物件を使用することによって収益性を高めることができます。民泊の場合には通常の賃貸の2~3倍以上の収益をあげることも可能で、最近事業者の間で注目されています。
事業としてホテルやゲストハウスのような営業形態で民泊を行う場合にはこのタイプの物件が適しています。
物件を1棟まるまる購入するための資金と多額の設備投資が必要となるのがネックです。
アパート、マンションの一室
現在無許可の民泊施設として問題になっているのがこのタイプです。
旅館業許可取得が極めて難しいといわれていますが、実際にアパート、マンションの一室でそれほど費用をかけずきちんと許可を取得して運営されている施設もあります。
このタイプで民泊を行うには許可を取得できる地域の選定から入ることが重要です。
東京、京都ではこの形態での運営は現在のところ厳しいですが、運営できる自治体を探せばアパート、マンションの一室で民泊を行うことも十分可能です。
一室で行うので施設あたりの収益が少なくなるのがネックとなります。
不動産業者ごとに得意とする物件が違いますから明確なビジョンがないと業者の選定もできません。
どのようなタイプが自分の理想のする物件なのかを探す前に決めてしまいましょう。
3.探す物件の地域を決める
物件探しの前に物件の地域を決めます。当たり前のことのようですが物件が見つからないと意外とぶれてしまうポイントです。
ホテル・旅館業と同じく民泊も立地のビジネスです。初めてホテル経営に科学的かつ合理的な技術を導入した米国のホテル経営者であるスタットラーの言葉に
「一に立地、二に立地、三にも立地」
という言葉があります。
これは業界でも有名なホテル業成功の秘訣とされています。
まずは各地域の民泊の需要についてリサーチをする必要があるのです。
各地域のリサーチ
まずは国土交通省の観光庁が発表している宿泊旅行統計調査を使って各都道府県での客室稼働率を調べましょう。
これを見ることで宿泊施設の需要を調べることができます。
客室稼働率の大体の目安としては都内で7~8割、地方の大都市、観光都市で6~7割、それ意外の都市で3~5割だと思います。都内で物件を探すのが一般的ですがライバルも多く、多くの宿が毎年オープンしているので供給過剰になりつつあるので注意が必要です。
また地域の詳細な情報を手に入れたい場合にはAirbnbのデータ分析サイトも有用です。以下のサイト等を利用してもいいでしょう。
AirbDatabank
有料でのエリアレポート、ピンポイントでの詳細分籍レポート、部屋の周辺データ、収益性予測レポートなどAirbnbの物件の分析に強いサイトです。
以下の過去記事でも取り上げてますので興味のある方は見てみてください。
参考記事:データを活用して民泊の収益を上げる!AirbDatabankの利用方法
Airlabo
URL: http://airlabo.jp/
民泊物件数、収益データ、各エリア家賃相場比較データ、物件のマップ等の情報を提供しているサイトです。
以下の過去記事でも取り上げていますので興味のある方は見てみてください。
参考記事: Airbnbを使った民泊ビジネスを可視化するサイト「AirLABO」
BnB Insight
200物件以上の民泊運用リアルデータを活用したデータを用いてAirbnbから取得したデータに独自の修正を加えています。実査の運用データを用いたテスト検証が行えるのが強みのサイトです。
Airbnb以外にもHomeAway、Flipkey、Roomorama、Wimduのデータ分析を行っているのも特徴です。
AirDNA
URL: https://airdna.jp/
カリフォルニアで創業したデータ分析の会社の日本版です。独自の高度な人工知能で正確な稼働率を計測しているのが特徴のサイトです。
4.不動産物件情報を手に入れる
ここまでの基本的な契約形態、物件のタイプ、立地が決定したらいよいよ物件情報を探してみましょう。
通常の不動産業者では民泊用の物件を扱うことはありません。管理会社とのトラブルやコンプライアンス上の問題などで物件を紹介してくれるところはほとんどないと思います。
不動産を購入して民泊を始めるという場合には物件を紹介してくれるケースがあるかもしれませんが、賃貸の場合は物件探しは難しいです。
「所有物件」と「賃貸物件」に分けて探し方を見ていきましょう。
所有物件の場合
不動産屋へ探しに行く場合
所有物件で民泊運営をする場合には物件は「売買」で手に入れることになります。不動産屋は「売買」を中心に行っているところ、「賃貸」を中心に行っているところと各業者によって得意分野が変わってきます。「売買」を主に取り扱っている業者を選びましょう。
また物件のタイプによっても商業テナントを中心に取り扱っている業者や中古住宅を取り扱っている業者等分かれているので今までに決めた方針をもとに業者を選定していきます。
インターネットの情報で探す場合
インターネットも物件探しの有力な手段となります。
ただしネットに出ていない情報の中にもいい物件はたくさんあります。自社で買い手を探して見つからなかった場合にネットにあげて広く募集するという場合があります。本来はこうした行為は囲い込みといって宅建業法違反にあたる行為なのですが、まだまだこうした状況は業界内であるようです。
インターネットに全ての情報があるとの前提で探すのは早計ですね。
後記のサイトなどを参考に詳細条件を入力して物件を探してみてください。
賃貸物件の場合
不動産屋へ探しにいく場合
賃貸物件で民泊運営を使用とした場合大手の不動産屋ではまず断られると思います。不動産業を行っている友人や営業の方に聞いてもやっているところはないそうです。
不動産業者であれば民泊を専門に扱う業者を探さなければなりません。なかなか個人で探すのは難しいとは思いますが、業界の方の話によると若い経営者で比較的新しい会社の場合は取り扱っていることがあるそうです。
あらかじめネットで民泊専門の不動産業者の情報を手に入れてから訪ねるといいと思います。
インターネットで探す場合
インターネットにも賃貸物件の情報はたくさんあります。賃貸で探す場合はやはり民泊専門の賃貸情報などを活用するといいでしょう。
注意しなくてはいけないのは「民泊可能物件」の取り扱いをうたっているサイトです。
たまに「転貸許可物件」を「民泊可能物件」として掲載している業者がありますが、
「転貸可能物件」≠「民泊ができる物件」
です。
民泊するためには、大家さんの転貸の許可に加えて行政からの旅館業の許可が必要になります。転貸の許可を得た物件だからといって営業行為を勝手に始めていいわけではないのです。
インターネットで物件を探す際には「転貸許可」だけなのか、建築基準法、消防法、構造・設備面で「旅館業法の規定をクリアできる物件」なのかを問い合わせるようにしてください。
物件探しに役立つサイト
Airbnb用物件を探す際には以下のサイトが役に立ちます。有効活用しましょう。
楽待不動産
物件数、利用者数ともにNO.1の収益不動産専門のサイトです。1棟マンション、1棟アパート、1棟商業ビル、戸建賃貸、ホテルなど他のサイトでは扱いの少ない不動産物件が掲載されています。
投資用不動産のサイトなので販売価格の他に表面利回りを見ることができます。
民泊物件.com
URL: https://minpaku-bukken.com/
民泊物件.comは転貸可能物件を扱うサイトです。簡易宿所営業の許可を取得できるかは自分で専門家に頼んで調査しなければなりませんが、掲載物件数は多いです。
東京R不動産
URL: http://www.realtokyoestate.co.jp/
東京近郊のお洒落で特徴的な物件を扱っています。リフォーム可能な物件が多く事業用として集客力の高い物件を探す時に役に立つサイトです。東京以外にも大阪、金沢、房総、稲村ケ崎、神戸、福岡、鹿児島の物件を扱うサイトがあり全国的に物件を扱っています。
こちらのサイトは超人気サイトで物件の入れ替わりが激しいです。気に入った物件が見つからなくても定期的に探してみるとよい物件が見つかる可能性があります。
HOME'S
物件数NO.1を誇る大手の不動産・住宅情報サイトです。民泊物件を扱っているわけではないので、選別に多少知識が必要ですが圧倒的な登録物件数ですのでいい物件が見つかる可能性もあります。
HOME'S自体も民泊事業参入を表明しておりHOME'S掲載の全国742万件の物件から民泊事業用に100万件の規模を目指すとのことです。日本国内でのAirbnbのような存在を目指していくようですね。
この他にも役立つ物件情報サイトは無数にあります。自分の好みの物件を扱っているサイトを探してみましょう。
5.物件についての法的チェック
いい物件が見つかったと思ってもそれが旅館業許可を取得できる可能性のある物件でなければ意味がありません。
絶対に気を付けなければならない点は「用途地域」と「検査済証の有無」です。
用途地域
用途地域とは都市計画法に基づいて定められている土地の利用方法についての定めです。 この地域は住宅を建てよう、この地域は工場を建てようといったことが土地について決められています。
民泊が可能となる物件の用途地域は以下の6つです。
- 第一種住居地域
- 第二種住居地域
- 準住居地域
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 準工業地域
用途地域を変更することは並大抵ではないのでこれら以外の用途地域に物件がある場合は原則素直にあきらめましょう。もちろんこれら以外の地域で民泊をする方法も特殊な方法ですがあります。そういったケースを希望する場合には専門家に相談しましょう。
用途地域の調べ方については以下の記事に詳しく書いてありますのでそちらを参照してください。
参考記事: 【民泊物件探し】知らないと大変なことに!用途地域の調べ方。
検査済証の有無
検査済証とは建築基準法に適合した建物であることを証明する書類です。建物の完成後にチェックをして発行されます。
主にこれは物件の床面積が100㎡を超える場合に重要な書類になってくるのですが、東京都の一部の区での営業許可申請の場合には旅館業許可申請の添付書類にもなっています。
まず「検査済証」が発行されていない場合、違法建築物である危険があります。違法建築物で有る場合には現在の建築基準法に適合させなければならないためかなり高額な費用がかかります。新築した方が安いケースなどもあります。
また「検査済証」がない場合には、たとえ建物がきちんと建築基準法に適合していたとしてもそれを証明する書類がありませんので、もう一度建築士のチェックを受けなければならなくなります。
古い物件の場合は検査済証がないことの方が多いです。意外に思われるかもしれませんが昔は法律になかった規定ですし、規定ができたあともしばらくは検査済証を取得しないことが普通だったようです。
検査済証がないと費用や時間、手続きの手間がかなり増えるので必ずチェックしておきしょう。
この2つ以外にも調べるべきポイントはたくさんありますので法的な部分は専門家のチェックを受けた方が絶対にいいです。生半可の知識で挑むと必ず痛い目をみます。私の事務所へも物件取得後どうしたらいいかとご相談されることがありますが、どうしようもなかったケースがいくつかありました。
不動産という高額なものを扱う以上この部分にはしっかり費用をかけましょう。
私の事務所でも簡易チェックと物件の現地調査を取り扱っているので法的な部分のチェックを受けたい方は
よりご相談ください。
まとめ
合法的にAirbnbをできる物件というのは全物件の中でいうとかなり少ないです。そのため物件探しが大変になるのですがきちんとした知識があればいい物件を見つけてくることができます。
正しい知識を身につけてから物件探しに挑みましょう!