旅館業法では「ホテル」、「旅館」、「簡易宿所」、「下宿」の4つの営業形態が定められています。
この中でホテル、旅館についてはお馴染みでしょうし、「簡易宿所」については、厚生労働省が民泊を「簡易宿所」として位置付けたので知っている方も多いでしょう。
残るは「下宿」ですが旅館業法上の「下宿営業」は一般的な下宿の意味とは違います。
今回は旅館業法上の「下宿」について解説したいと思います。
下宿営業とは
旅館業法上の下宿営業とは、「施設を設け、一月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業をいう」と定義されています。
下宿営業を営む場合は都道府県知事(保健所を設置する市または都内の区では市長又は区長)の許可を受けなければなりません。
ただし、すでにホテル営業、旅館営業、簡易祝営業の許可を受けているならば許可を受ける必要はありません。
一月以上期間を設けて宿泊料として取る営業をする場合には、下宿営業の許可を得ないとなりませんが、実際にこの許可を取得することはほとんどありません。
実はこれには理由があるのです。
不動産賃貸と旅館業
人に部屋を貸し出す方法は宿泊料をとって営業する旅館業の他にもっとポピュラーなものがありますよね。
そうです、不動産賃貸です。
1カ月以上の部屋の貸し出しならば旅館業法の許可ではなく、不動産の賃貸借契約を結べばいいのです。
1カ月未満の不動産賃貸を結んでも旅館業として扱われてしまいますが、1カ月以上であるならば賃貸借契約として扱われます。
なのでウィークリーマンションなどは旅館業の許可を取って運営している所が多いです。
わざわざ旅館業法の厳しい構造設備基準を満たさずとも部屋の貸し出しを行なうことができるので下宿営業の許可を取ることはあまり意味がありません。
ただし下宿営業と不動産賃貸には明確に区別されるところがあって、
「施設の管理経営形態を総合的に見て、衛生上の維持管理責任が営業者にある」(旅館業法第2条及び厚生省生活衛生局指導課長通知昭和61年3月31日衛指第44号「下宿営業の範囲について)
ならば下宿営業となります。
住んでいる人が掃除をするのか、オーナーが掃除をするのかの違いですね。
もしどうしても、物件の掃除は自分でしたいという奇特なオーナーがいれば、下宿営業の許可が必要となるでしょう。
下宿営業許可は民泊には不要
下宿営業の許可取得を民泊で考えることはありません。
全国には770施設ほど下宿営業の許可を受けている施設があります。
下宿営業はホテルや旅館と比べて許可取得の要件は緩いので一定の需要が
あるのかもしません。
民泊を始める上で旅館業法の下宿に関する規定は特に考慮に入れずに、
ホテル、旅館、簡易宿所の営業についてしっかり調べましょう。