民泊と法律

なぜAirbnbは日本で無許可の物件を掲載しても法律違反にならないのか?

民泊では旅館業の許可を得ないで物件を貸し出すことが違法行為として問題となっています。

今でもそうした物件はAirbnbという民泊仲介サイトに大量に掲載されています。

「無許可の物件を掲載をしているAirbnbにも何か罰があるんじゃないの?」

なんて思いませんか。

しかし、「物件を掲載している人」を罰することはできてもAirbnbというサイトを罰することはできないんです。

なぜAirbnbが無許可の物件を掲載しても罰せられないのかについて解説してみたいと思います。

 

Contents

Airbnbはプラットフォームビジネス

Airbnb-top

Airbnb(http://www.airbnb.com)は空いている部屋を貸したい人と空いている部屋に泊まりたい人をインターネット上でマッチングさせ、そこから手数料を取って収益をあげているサイトです。

こうした「場」を提供して手数料を徴収するビジネスはプラットフォームビジネスと呼ばれます。

プラットフォームビジネスでもっとも分かりやすいのはヤフオク!じゃないでしょうか。

物を売りたい人と買いたい人を集めて売買をさせる「場」を提供し、そこから手数料をとっています。

他にも

  • Google
  • Facebook
  • 楽天市場
  • Amazonマーケットプレイス
  • iTunes
  • グルーポン

などがそうですね。

Airbnbが上記のサイトと同じ種類だと意識すると罰せられない理由が見えてきます。

 

プラットフォームビジネスにおいて契約するのは利用者

Airbnbで空いている部屋を貸し出す人をホストと呼びます。

このホストの行為が旅館業法に抵触する可能性があるからといって、ただちにサービスが違法となるわけではありません。

これは直接家を貸し借りしているのは、利用者同士であり、Airbnbはそれを仲介しているだけという理屈です。

例えば、ヤフオク!で偽物を買わされたからといってヤフオク!を運営しているYahoo! JAPANが詐欺を働いているということにならないのと一緒ですね。

プラットフォーム事業者は、ユーザーに対する直接の商品・サービスの提供者ではないことから、原則としてユーザーに対して責任を負わないとされています。

プラットフォームビジネスでも法的リスクはある

もちろんプラットフォームが責任を一切取らなくていいわけではありません。

 

幇助犯

刑法には、人の犯罪を助けたことで罪になる「幇助犯」という概念があります。

例えば、人を殺そうとしている人に拳銃を調達してきて渡すと「幇助犯」になります。

実際に無許可の物件を貸し出している行為をサイトを使って貸し出しているので「幇助」の罪にあたるかのように見えますが、

幇助犯が成立するためには

  • 幇助の意思
  • 因果関係

が必要です。

Airbnb側が無許可での貸し出しを助けるためにサイトを作ったという明確な意思が存在するなら幇助犯が成立しますが、実際にそれを証明するのは難しいですね。

 

個人情報漏えい

プラットフォーム型のサイトでは通常ユーザーの個人情報を扱うため厳しい管理が求められます。

最近ではYahoo!が5億人分の個人情報流出させたと発表して話題になりましたね。

個人情報を漏えいさせれば損害賠償を受けることになります。

情報のレベルによりますが、1人あたり

  • 住所氏名のみ → 500~1000円
  • クレジットカード、職業情報  → 1万円
  • スリーサイズ → 3万円

が相場だと言われています。

大量の情報が一気に漏れるととんでもない損害になりますね。

 

名誉棄損

匿名掲示版サイトの2ちゃんねるでは誹謗中傷に関して数々の訴訟が提起されていました。

掲示板の書き込みに対して、管理人のひろゆき氏に書き込みの削除と損害賠償を求めた件が多数ありました。

2ちゃんねるはもともと閉じたネットワークであるパソコン通信をもとにしていますから少し性質は違いますが、「場」を提供する側にも一定のリスクがあることが分かります。

 

著作権侵害

動画投稿サイトのYouTubeは著作権侵害で訴訟を起こされています。

MTVやパラマウント・ピクチャーズを傘下に持つ巨大メディアグループのViacomがYouTubeとGoogleを相手取り10億ドル(1000億円)の損害賠償と著作権侵害行為の禁止命令を求めました。

YouTubeも著作物を使って利益を得ている以上、利用者が勝手にアップしたものであるというのはさすがに難しいですね。

その後著作権に関してはGoogleもすぐに削除をしたり、ユーザーに厳しく注意喚起をするようになりました。

名誉棄損の例と同様にプラットフォームといえども第三者の権利を侵害することに対しては法的リスクが存在します。

 

Airbnbはしっかりと法的リスクを回避している

Airbnb側もしっかりと法的リスクの対策をしています。

以下はAirbnbのサービス利用規約の抜粋です。

お客様は、Airbnbがホストとゲストとの間の契約の当事者ではなく、不動産仲介業者、代理店又は保険業者でもないことを理解し、同意するものとします。Airbnbは、ホスト、ゲスト、その他本サイト、本アプリケーション及び本サービス又は本宿泊施設のユーザーの行為をコントロールすることはできず、法令に反しない限り、これらに関する責任は免責されるものとします。

この記述からはAirbnbは契約の当事者ではないことが明記されていますね。

実際に契約の当事者になってしまうとAirbnb側も貸主としてきちんと使用させる義務が発生してしまいますし、無許可での旅館営業が行われた際にAirbnb側にも責任が生じてしまいます。

そういったことを上記の規定で防止しています。

 

お客様がAirbnbにおいてリスティング(掲載物件)を作成することを選択した場合、お客様は、お客様とAirbnbとの関係は、メンバーと独立した第三者たる契約者としての関係に限定されるものであり、どのような理由においても、Airbnbの従業員、代理人、合弁会社又はパートナーではないこと、及びお客様は、専ら自身を代理して自身の利益のために行動し、Airbnbを代理してAirbnbの利益のために行動するものではないことを理解し、同意します。

こちらはホストがAirbnbの代理人として活動しているわけではにないことを明記しています。

ホストがAirbnbの代理人になると、法的効果はAirbnbへ帰属してしまうからです。

とにかくAirbnbは「場」を提供しているだけで当事者でないことを強調しています。

 

Airbnbは、すべてのリスティング(掲載物件)及び本宿泊施設についていかなる責任も負わず、また、いかなる責任からも免責されるものとします。

これはAirbnbが物件に対して起こる事故に対して何も責任を負わないことを明記しています。

この規定がきちんと法的な効果をもつかは微妙なところですが宿泊施設で発生する損害への対策はされています。

 

お客様は、ご自身がリスティングに掲載したすべての物件及びメンバーコンテンツに単独で責任を負うことについて了解し、同意するものとします。したがって、お客様は、ご自身がリスティングに掲載した本宿泊施設並びにこれに対するゲストの予約及び滞在が下記の条件を満たすことを表明し、保証するものとします。

(i) お客様が第三者との間で締結した契約(住宅所有者組合、コンドミニアム又はその他の第三者との間の契約等)に一切違反しないこと、並びに、

(ii)(a)すべての適用法令(都市計画法等)、税務上の要件、知的財産法及びお客様がリスティングに掲載した本宿泊施設に適用される規則及び規制(すべての必要な許認可、免許、登録等を備えていることを含みます)を遵守していること、及び、

(b)第三者の権利と抵触しないこと。

こちらは法令を遵守することを約束させる契約です。幇助犯のところで説明した幇助の意思を否定するための規定ですね。

あくまでも合法的な方法で空き部屋の貸し借りをすると約束した人にだけサイトを利用させています。

 

他にも色々な規定があります。

利用規約に同意させることで責任はすべてホストにあって、Airbnb側は責任を負わない規約となっていることがわかりますね。

 

まとめ

Airbnbは「場」を提供しているだけで契約の当事者でないので罰せられません。

たとえサイト内に掲載された物件を使って違法な行為が行われたとしても責任を負わない仕組みができています。

しかし、無許可の施設が増えすぎて近隣トラブルなどが問題となってきたのでこうしたサイト側にも一定の規制をかけようと国側は動いています。

私もAirbnbが責任を負わない今のシステムに対してはおかしいと思うので、こうした国の動きには賛成ですね。

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