民泊を始める場合には事業用のビルの利用も可能です。
マンションのような居住用物件で民泊をはじめるには近隣トラブルに注意を払わなければなりませんが、事業用のビルでは比較的トラブルが起きにくい傾向にあるようです。
今回は事業用ビルを民泊施設として利用する際のポイントを解説してみたいと思います。
Contents
事業用ビルで旅館業許可が取れるのか
民泊と聞くと一軒家やマンションでの運営がまず思い浮かびますが、事業用のビルで行われているケースも多いです。ビル1棟の場合もありますが、ビルのワンフロアや店舗物件のテナントとして営業している宿もあります。
例えば、ゲストハウスでは鎌倉の「月の宿」、高松の「BJ STATION」などがビルの1室で営業しています。
事業用のビルの一室でも要件を満たせば旅館業許可取得は可能です。ただし、許可取得にはいくつかハードルがありますので注意が必要になります。
1.まずは民泊予定地の用途地域をチェック
旅館業許可を取得できる場所というのは限られています。
市街地には「用途地域」と呼ばれる土地の利用上の制限を定めた規定が設定されています。例えば、「第一種低層住居専用地域」という地域では主に住居を建てましょうとか、「商業地域」では主に商業施設を建てましょうといったことが決められています。
民泊施設やゲストハウスはホテル又はという種類の建物ですので以下の6種類の地域でしか建築することができません。
- 第一種住居地域
- 第二種住居地域
- 準住居地域
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 準工業地域
用途地域はほぼ変更は不可能です。土地に関して旅館業の許可取得可能な用途地域でなければ、ビルを買ったり、借りたりしても旅館業の許可を取得することができません。
民泊施設、ゲストハウスを始めるに当たって用途地域の調査は必須です。
2.建物の検査済証が発行されているかを確認する
「検査済証」とは、建築物及びその敷地が建築基準関連規定に適合していることを証明する文書です。役所や建築業界の方は「検済(けんずみ)」と言ったりします。
通常建物完成後に完了検査申請を行い、係員による現地での完了検査、施行写真、試験成績書などのチェックを行い、建築基準関連規定に適合していることが確かめられた場合に交付されます。
この「検査済証」は旅館業の許可で重要な役割を果たします。宿泊施設が100㎡以上のビルでは「用途変更」という手続きが必要になるのですがその際に使われますし、旅館業許可自体の添付書面になっている自治体もあります。もちろん建築基準法12条5項による報告などの代替手段で申請が可能な場合もありますが、許可申請において保証はされないので注意が必要です。
少し古い物件ですと「検査済証」が発行されていないことがむしろ普通です。通常不動産会社も用途変更などは想定していないので「検査済証」が発行されているかなどは聞かないと教えてもらえません。
基本的に不動産と建築は別の分野の話で意外とお互いの分野の知識は少ないです。さらに旅館業許可申請となると知識のある方はほとんどいないのが現状ですね。
旅館業許可を取るためには建物の「検査済証」が発行されていることを確認しておきましょう。
3.賃貸借契約の転貸禁止規定の有無の確認
事業用ビルでは入居者全員が守るルールとして「管理規約」 というものを定めています。ここでは一般的に転貸禁止規定が定められています。
賃貸物件の民泊施設の場合、法律上は自分が借りた部屋を旅行者に貸し出すので「転貸」ということになります。貸主の許可なく転貸してしまうと法律上は契約を解除されたり、損害賠償を請求されます。
事業用のビルで民泊施設を運営するためには、管理規約を確認して転貸禁止規定がある場合にはビルのオーナーの承諾を得ることが必要です。承諾を得る際には必ず書面で「承諾書」をもらうようにします。トラブルになった場合で書面がない場合には、ほぼ裁判で負けて追い出されてしまいます。トラブル防止のために書面にて承諾をもらっておきましょう。
4.窓の大きさを確認する
事業用のビルで注意しなければならないのが採光基準です。用途が事務所の場合には採光の規定が適用されていません。つまり窓がなくても事務所として貸し出すことは可能で採光については特に配慮されていない場合があります。
しかし、ホテル・旅館といった建物には法令上で採光基準が定められています。窓の大きさについてはきちんと数値で定められています。これに足りない場合は新たに窓を増やさなければなりません。一戸建てのような居住用物件では費用をかければできないことはないですが、事業用のビルではほぼ不可能ですので旅館業許可取得はできません。
規定自体見落としがちなので注意してください。
まとめ
最近では事業用ビルでの民泊施設、ゲストハウスの利用も増えてきました。事業用ビルと旅館業許可は意外に相性がよくリフォーム費用が安く済む場合があるので民泊におすすめできる物件です。
ただし事業用ビル特有のハードルも存在します。きちんとした知識をもって物件調査をしなければ多額の保証料を払ったのに許可取得できず営業を断念せざるを得ない事態も生じます。
都市計画法、建築基準法、消防法、旅館業法についてあまり詳しくない方は物件取得の前に必ず専門家にご相談下さい。