国家戦略特別区域内で行う「特区民泊」と旅館業の「簡易宿所営業」の許可を得て行う民泊の2つの方式が存在します。
この2つのどちらを選ぶかは、運営する人の自由ですが、「簡易宿所営業」の許可を取ることを断然おすすめします。
一見、許可取得のハードルが低い「特区民泊」の方がよさそうですが、「簡易宿所営業」の方が優れている明確な理由が存在します。
今回は、「簡易宿所営業」が民泊運営に優れているということを解説いたします。
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1.一日単位での宿泊が可能
「簡易宿所営業」が優れている点は、1日単位で宿泊施設を貸し出せるということです。
「特区民泊」は現在7日以上の滞在しか認められておらず、宿泊者のニーズとは合致してない状況です。
観光庁の訪日外国人消費動向調査では、都内を訪れる外国人の58%が6日以下の滞在で、7日以上滞在する外国人は約4割。
また、7日間以上の滞在する場合であっても、同じ施設にずっと泊まり続けるわけではないので、割合はさらに少ないです。
観光庁の宿泊旅行統計調査によると、都内の訪日外国人観光客の1施設あたりの平均滞在日数は3日にも満たないです。
日本人においても、2014年の観光庁の旅行・観光消費動向調査のデータでは、観光・レクリエーションや出張で7日以上滞在するケースは4.7%と少ないです。
費用がかかったり、許可が面倒だからといって、安易に特区民泊を選択すると、大きな需要を取り逃すことになります。
正直、滞在期間が7日以上に限定された場合、運営していける施設はほとんどないでしょう。
2.「じゃらん」や「楽天トラベル」等大手旅行サイトに登録ができる。
「簡易宿所営業」の許可を得ると、「じゃらん」や「楽天トラベル」といった旅行サイトへ宿泊施設の掲載が可能になります。
旅行サイトは旅館業許可を登録の要件としているので、「特区民泊」ではこのようなことはできません。
日本ではAirbnbのようなサイトは、まだまだマイナーな存在で、日本人向けの集客は圧倒的に旅行サイトが有利です。
「簡易宿所営業」は総合的に集客面でも強いです。
3.地元の観光協会に登録ができる
「簡易宿所営業」の許可があれば、地元の観光協会に登録ができます。
地元の観光協会に登録すると、施設情報の発信・あっせん、PR提供、マスコミ雑誌等への情報提供、観光協会のサイト・売店での物品の販売、ツアーの立ち寄り・あっせん、観光情報などの提供等が受けられます。
地元密着でやっていく場合には、観光協会等を通して各団体とのネットワークを築くこともできるのもメリットです。
4.特区以外での運営が可能
「特区民泊」は当然国家戦略特別区域内でのみ営業可能な形態です。
特区内では、参入障壁が下がりますので宿泊施設は激しい競争にさらされるリスクがあるでしょう。
逆に「簡易宿所営業」では、各自治体の要求する基準を満たせば、どの都道府県でも営業可能です。
日本全国人気観光スポットはたくさんありますし、外国人観光客の方も色々と国内を移動しますので特区外だからといって特にデメリットはありません。
「簡易宿所営業」は競合の少ない地域で宿泊施設の運営も可能となります。
5.信用が高い
「簡易宿所営業」は旅館業法に基づいて許可書が発行されるので、対外的な信用は高いです。
現在民泊を運営している施設のほとんどが違法状態です。
こうした施設と混同されないよう「簡易宿所営業」の許可を取っておいた方がいいでしょう。
まとめ
上記のような理由で現在では圧倒的に「簡易宿所営業」の許可を取って民泊運営をする方が優れています。
ただし、「特区民泊」についても現在議論が続いているところであり、今後規制緩和も予定されています。
もしかすると「簡易宿所営業」のできない住宅地での民泊もできるようになるかもしれません。
今後は、民泊の制度運用にあわせて、2つの方法についてそれぞれのメリットを検討するようになるかもしれません。
※2016年10月31日追記
政令の改正により2016年10月31日から特区民泊の最低宿泊日数が「2泊3日以上」に変更されました。各特区内の条例の改正があれば2泊3日以上からの宿泊が可能となります。
この変更により大きく状況が変わりつつあります。
集客を考えるのであれば簡易宿所営業取得が圧倒的に有利ですが、初期費用が大きくかかるデメリットがあります。
用途変更手続きやトイレ、洗面台の設置等物件によっては特区民泊での運営を検討する方がよいものもでてきます。
簡易で小規模な施設の運営については特区民泊についても検討してみてください。