民泊と法律

国がフロント・トイレ等の設備基準を緩和か?旅館業における衛生等要領の改正

 

厚労省から、平成29年12月15日、旅館業の運営の基準ともいえる「旅館業における衛生等管理要領」の改正について各自治体へ通知がありました。

旅館業法の改正にともなって旅館業許可の設備基準の緩和を国は進める予定のようです。

ホテルや旅館、簡易宿所の営業の許可において重要な意味をもつ衛生等管理要領の改正について書いてみたいと思います。

 

衛生等管理要領の重要な改正ポイント

今回の改正で重要なポイントは以下のものになります。

  • 建築基準法、消防法その他各種法令の遵守の要求
  • 天井の高さ(おおむね2.4m以上)の指導基準の削除
  • フロントの内側から鍵を保管する設備の設置の削除
  • フロントの受付台の前の場所の広さの指針の削除
  • ホテルのロビーの面積の削除、ホテルのロビーを設ける規定の削除
  • 廊下の幅、階段の高さの基準の削除
  • 客室に天井を設ける旨の規定の削除
  • 客室の区分の規定の削除
  • 洋式の寝具の規定の簡素化
  • 和室の区画、寝具の保管設備の設置規定の削除
  • 浴室の広さ、面積基準の緩和
  • 脱衣所の面積の数値基準の削除
  • 洗面設備基準の簡素化
  • トイレの便器の数の規定の削除
  • 採光の窓の面積基準の削除
  • 寝具リネン類に関する規定の削除
  • 寝台1台当たりの面積規定の削除
  • 宿泊者の専用の保管設備設置規定の削除
  • 下宿営業の客室数の規定の削除
  • フロント不要の規定から10人未満の人数の削除
  • 緊急時の対応の基準が10分程度で職員等が駆け付けることができる体制をとることが望ましいとの規定の設定
  • 1客室に宿泊させる人数基準の削除
  • 暴力団員の宿泊拒否の規定の設定
  • 消費者ニーズに合わせての宿泊拒否は可能となる規定の設定

改正前の設備に関する数値基準についてはほとんど削除となりました。黄色で印をつけたところが今後旅館業に影響してきそうなところです。

この他にも細かい様々な規定が変更され、かなり大幅な改正となっています。

 

参考資料: 旅館業における衛生等管理要領の改正について

 

後日、旅館業法施行令の改正も行われる旨が各自治体通知されています。

 

厚労省が目指す規制緩和の方向

衛生等管理要領は旅館業を運用する上での構造設備基準や衛生措置義務を定めたものではあるのですが、あくまで行政内部の文書です。
直接の許可基準ではないので、今のところ許可申請には特に影響はありません。

ただし、衛生等管理要領は自治体が条例を制定する上で参考にするものでもあります。

改正点を参考に条例がつくられたり、旅館業法施行令の改正されたりした場合には許可基準が大幅に変わる可能性があります。

昨年の旅館業規制の見直しに関する規制改革推進会議では

  • 客室の最低数
  • 寝具の種類
  • 採光・照明設備の具体的要件
  • 便所の具体的要件

の規制の撤廃と、

  • 客室の最低床面積
  • 入浴設備の具体的要件

については公衆衛生等の観点から規制を必要最小限にとどめる旨の意見がでました。

また、フロントについても、1.8mといった長さの要件の撤廃と、ICTの活用によりセキュリティ面や本人確認の機能が代替できる場合は設置不要とすべきであるとの提言がされています。

今回に改正についても概ねこの会議の内容に沿ったものとなっています。

ホテル営業や旅館営業の客室最低数は旅館業法施行令で定められているため撤廃される可能性があります。

この場合、1部屋のみのホテル・旅館といったものが可能になります。許可申請上は構造設備の設置に関してかなり大きな影響があります。

特に民泊の許可申請に関しては建物をあまりいじらずに許可取得できる可能性がでてきますので旅館業法施行令の改正には注目ですね。

 

衛生等管理要領の改正は自治体を拘束しない

今回の通知は地方自治法第245条の4第1項に規定する技術的な助言にあたるものになります。

国から自治体へのお願いといったレベルのものです。

実際、旅館業許可に関して台東区に問い合わせる機会があったので今回の通知について聞いてみましたが、許可の審査基準は今のところ何も変わっていないとのことでした。

今後は改正旅館業法や住宅宿泊事業法をもとに各自治体ごとにルール作りが行われていきそうです。

今回別の通知でフロントの緩和についても国が個別に言及しています。

自治体には、現状にあったフロントや構造設備の基準を設定して頂きたいですね。

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