マンションの1室をAirbnbに登録して民泊を行っているケースはかなりの数にのぼります。
しかし、こうした物件のほとんどは違法な状態で行われています。
国交省によって作成されたマンション標準管理規約内では、「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」と定められていて、「民泊」目的でマンションの部屋部分を使うことはできないようになっています。
国交相は2015年12月22日の閣議後に行った記者会見でも「民泊」を分譲マンションで行う場合はマンションごとに定めている管理規約の必要があると述べています。
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マンションでの民泊を防ぐ方法
無断で民泊をされて集合住宅のオーナーや管理会社の方から相談依頼が来ることも多々あります。
しかしながら、マンションの所有者(区分所有者といいます。)は自分の部屋の部分に関して所有権を持っていますので、部屋の使い方については自由であるのが原則です。
仮に民泊を行為を行っていたとしても、これをやめさせたり、追い出したりするためには「共同の利益に反する行為」をしたといえるような事情が必要です。部屋の貸し出しをしたというだけでは「共同の利益に反する行為」とはいえません。
騒音やゴミ出しの問題で近所のとのトラブルになったとしても、強制的に追い出すためには訴訟を提起しなければなりませんし、訴訟を提起しようとすれば、マンション住人の決議も必要になってきます。
つまり、一度民泊を始められてしまうと、多大な費用と労力をかけなければやめさせることができないのが現状です。
マンションで民泊をされないために有効な方法は「予防」です。
1.管理規約を改定して「民泊禁止」を明記する
まずは、マンションの管理規約を改定して「Airbnbへの登録禁止」、「マンション独自のルールでの営業認可」などの項目を新たに設け、規約違反が生じた場合には迅速に厳しく対処することが必要です。
規約改定に必要な手続きを行うためには、総会をひらかなければなりませんから、資料作りをしたり新規約の説明をしましょう。
BrilliaMare有明TOWER&GARDENというマンションではいち早く民泊対策に取り組み、WEB上で管理規約公開しました。
以下がその民泊部分の規約です。
【BrilliaMare有明 TOWER&GARDEN 管理規約】
(専有部分の用途)
第12条
(1~3省略)4.区分所有者は、理事会の決議で特に承認された場合を除き、専有部分を、直接・間接を問わず、「シェアハウス」に供してはならない。なお、本規約にて「シェアハウス」とは、専有部分の全部または一部(以下、単に「専有部分」という。)の利用形態が以下に掲げる各項のいずれかに該当する場合における当該専有部分の長期・短期の利用様式をいう。
(1)専有部分の居室(キッチン、トイレ及び風呂を除く。以下本項にて同様。)の数(以下「室数」という。)を超える数の者(区分所有者、区分所有者の親族、区分所有者からの賃借人、上記賃借人の親族(以下あわせて「縁故者」という。)を除く。)による継続的な居住、宿泊または滞在。
(2)室数を超えない数の不特定の者(縁故者以外の者でいずれの縁故者も常時かつ明確に住所、氏名及び職業(就業就学先を含む。)を把握していない者をいう。)による居住または宿泊。
(3)縁故者を含む複数の者による居住、宿泊または滞在で、直接・間接を問わず、複数の者から居住、宿泊または滞在の対価を徴収することを予定しているもの。
(4)前各号のためにする改築・改装。5.理事長は、理事会の承認がないにもかかわらず、専有部分がシェアハウスに供されていると認めたときは、当該専有部分の区分所有者に、専有部分をシェアハウスに供することを中止するよう請求することができる。専有部分の区分所有者または占有者が合理的な理由を示さず第12条第7項の協力を拒んだ場合も同様である。
6.理事長は、専有部分がシェアハウスに供されているかどうかの事実を確認するため、随時、任意の区分所有者に対し専有部分の利用状況について口頭または書面で照会をすることができる。
7.前項の照会の結果、専有部分の外観、近隣住戸の居住者または専有部分に出入りする者等から任意に聴取した事項、各種媒体上で見分した賃貸情報などから合理的に判断して専有部分がシェアハウスに供されていると推認した場合、理事長は、理由を告げて、当該専有部分の区分所有者または占有者に対し、専有部分がシェアハウスに供されているかどうか実地に見分するため理事長及び理事複数名が専有部分に立ち入るのを認めるよう協力を求めることができる。
単純に民泊を禁止するなどの文言ではなく、それぞれのマンションに実態にあわせて詳細に規定を盛り込んでいく必要があります。
これを参考に各管理組合で管理規約を改定しましょう。
ちなみに規約で、住宅以外の用途に使用した場合マンションから追い出す等の定めをしたとしても、所有者の権利を一方的に制限するような規約は無効になる可能性があります。
もし、法的な部分でその規約が可能なのかどうか迷ったら専門家に相談して下さい。
2.管轄の保健所や保健福祉センターへ通報する
現在民泊を継続的に行うためには旅館業法上の「簡易宿所営業」の許可が必要になっています。
簡易宿所営業の許可を得るためには未だに構造・設備要件が厳しく、マンションの一室で取ることは困難であることが多いです。
無断でマンションの一室で行っている民泊は、ほとんどこの旅館業法上の許可を取らずに営業しています。
これは違法行為ですので、行政からの行政指導・摘発で民泊使用をやめさせることができる可能性があります。
旅館業法の許可の調査について管轄しているのは、保健所や保健福祉センターなので、無断の民泊で困っている場合には連絡して下さい。調査にかける人材が不足していますが、通常は職印が物件の調査にきて、使用状況を尋ねたりしてくれます。
最近では、大阪でマンションの民泊を行政指導を繰り返すことなく摘発したという事例もありますので、行政側も違法民泊に対して厳しい姿勢を取り始めました。
大阪市では2016年からは保健所の担当職員を2名から22名へと増員します。
京都では民泊対策の専門チームの結成や、民泊苦情相談受付窓口ができています。
FAX: 075-223-0701(24時間受付)
メールフォーム: https://sc.city.kyoto.lg.jp/multiform/multiform.php?form_id=2318&_ga=1.225632088.315944629.1475734440URL: http://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/page/0000201777.html
もし、民泊を開始されてしまった場合には、行政側に対処してもらうのが現在ではもっとも効果的な方法です。
3.Airbnbへの物件の削除要請をおこなう
民泊は通常オンライン上のAirbnbという仲介サービスを使用しておこなわれます。
民泊を始めるには、物件をAirbnbのリストに登録し、そこで海外の外国人旅行客からの予約を受けて宿泊料を徴収します。
このリストからの削除をAirbnbに依頼するという方法も今後有効な対策になっていくのではないでしょうか。
Airbnbのリストに登録する契約条件として、次のように定めています。
Airbnbは、ホストが第三者との契約又は第三者に対する義務、適用法令及び規制を遵守することについて一切責任を負わない点にご注意下さい。Airbnbは、いつでも事前の通知なしで、いかなる理由であれ、一切のリスティング(掲載物件)を非掲載とし、又は一切のリスティングに対するアクセスを停止する権利を留保しています。これには、Airbnbがその単独の裁量により、望ましくないと考えるもの、本規約若しくは当該時点において有効なAirbnbのポリシー及びコミュニティ・ガイドライン若しくはスタンダード、商標及びブランドに関するガイドライン(に違反するもの、又はその他の理由により本サイト、本アプリケーション若しくは本サービスにとって有害であると判断した物件を含みます。
このようにAirbnb側に物件の掲載やアクセスを停止する権利が留保されているため、Airbnb側に要請すれば、不特定多数の旅行者がマンションの一室に泊まりに来ることをとめることができる可能性があります。
Airbnb日本法人ではグローバル全体の施策として苦情窓口設置の方針も明らかにしています。
参考記事:民泊の苦情はどこにいえばいい? Airbnbも苦情受付窓口設置へ。
今後警察との連携を強化して警察との窓口の設置も検討されているので、こちらの相談窓口ができれば民泊をやめさせるための有効な手段となりそうです。
※2016年10月20日追記
「Airbnbと近隣のホスト」というページから民泊の仲介をしているAirbnbへ直接トラブル相談できるようになっています。
家の周りで民泊をされて悩んでいる方はトラブルを報告するといいと思います。
ただし、民間企業なので取れる対応が限られています。報告すれば該当の物件をページから必ず削除してもらえるわけではありません。
まとめ
民泊をやめさせるというのは多大な労力・費用・時間がかかります。まずは予防的に管理規約の改定で対処して、分譲マンション内の住民への周知徹底や民泊をできない環境づくりをおこなうべきです。
民泊に対しての法整備が行われている途中であるため、保健所やAirbnb側の対処というのも後々態勢がととのってくるでしょう。
それぞれマンションごとにスタンス違いますのでなかなか一定の管理規約での対策は難しいと思いますので、規約のチェックを専門家に行ってもらうのがいいでしょう。