2014年から急速に普及しはじめた「民泊」という単語。実際、ニュースやネット見るけど詳しいことはよく分からないなんて方も多いと思います。
外国人の旅行者に空いてる部屋を貸す?
法律的に問題があるらしい?
騒音やごみ問題で近所とトラブルになっている?
民泊は危険?
ぼんやりとしたイメージはあるけどよく分からないというあなたのために「民泊」とは一体何なのかを詳しくご説明します。
1.「民泊」とは?
「民泊」とは個人宅の一部や空き別荘、マンションの空室に宿泊することをいいいます。
友達の家に泊めてもらうなんてのも広い意味でいったら民泊の一種ですね。
ただし、新聞やネットでみる「民泊」という単語は、旅行者などがインターネットの仲介サイトを使って、見ず知らずの人の部屋にお金を支払って泊まるという意味で使われています。
こうしたスタイルでの宿泊は2008年頃に登場したAirbnbというサービスの登場によって世界中に爆発的に広がりました。現在では世界192カ国の33,000の都市で80万以上の宿を提供しています。
Airbnbというサイトを使えば、目的の都市を検索するだけで、世界中のどこでも他人の家の部屋に泊まることができるようになっています。
現在日本国内でも、空いている家やマンションの一室など役4万件の部屋が登録されています。
この全く見ず知らずの他人を料金をもらって自宅に泊めるという行為が「民泊ビジネス」として流行しだしたのと同時に、その行為の法的な問題や近隣住民とのトラブルなどで社会問題化し、大きくメディアで取り上げられるようになりました。
全く見ず知らずの人を家に泊めるなんて考えられない!
なんて思いますよね。
しかし、今は「民泊」を通して国際交流を楽しんだり、ビジネスとして収益を得たりしてる方が大勢いる時代なんですね。
2.「民泊」の法的な問題点
料金を取って個人宅を貸し出す「民泊」には法的な問題点が指摘されています。
それが旅館業法違反の問題です。
旅館業とは「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義されており、宿泊とは「寝具を使用して施設を利用すること」とされています。
「民泊」の料金を取って人を家に泊めるって行為は、やっていることは旅館やホテルと同じなわけです。反復継続して行う「民泊」は旅館業法上の営業行為にあたりきちんと許可を取る必要があるという問題がでてきました。
実際人を宿泊させる営業とは火災の危険であったり、伝染病の感染であったり、宿泊者の体調不良であったりと人の命を預かる営業ともいえるわけです。
本来こうした行為を行うためには、営業者をチェックして信頼できるものにだけ営業する権利を与えるというのが国の考え方です。
しかし、「民泊」に関しては個人間でのやり取りなので許可は必要ないという考えもありました。いわゆるグレーゾーンと言われていた時代の論理ですね。
この点については、厚生労働省から「民泊サービス」は宿泊料を受けて人を宿泊させる営業に当たる場合には、旅館業法上の許可が必要であると見解がはっきり示されていますので、現在グレーゾーンなどということはできなくなっています。
しかし、Airbnbに登録されている宿泊施設について9割ほどがこの旅館業法上の許可を取得せず営業を続けているので問題となっています。
実際に施設が摘発を受けるケースや営業者が書類送検されたり、逮捕されるといった事件も起きました。
2016年には上場企業の子会社が運営する施設が摘発を受けたりもしています。
3.特区民泊と民泊新法
合法的に「民泊」をするには3種類の制度があります。
- 旅館業の許可を得た「民泊」
- 国家戦略特区内で営業をする「特区民泊」
- 新しい法制度のもと運営をする「新法による民泊」
これらは非常に紛らわしく制度も複雑なので理解が難しいです。
主な違いは最低宿泊日数と年間営業日数の制限です。
特区民泊の場合には最低宿泊日数の制限があり、
新法による民泊については年間営業日数の制限がついています。
3つの制度の違いについて詳しく説明していきます。
旅館業の許可を得た「民泊」
旅館業の営業許可を得た「民泊」です。
旅館業の許可には
- ホテル営業
- 旅館営業
- 簡易宿所営業
- 下宿営業
の4種類があります。
通常の民泊では「簡易宿所営業」の許可を取得します。簡易宿所営業の許可の取り方については以下の記事を参考にしてください。
参考記事: 今後Airbnbに絶対必要!「簡易宿所」許可の取り方
規模によっては「旅館営業」などが設備や構造の費用の面で向いている場合もあります。
許可を取って営業するので制限なく自由な営業がおこなえることが特徴です。
許可は各都道府県知事(保健所設置市は各市区町村長)に対して、構造・設備を整えて書類を提出することで申請から約1カ月ぐらいで取得することができます。
ただし、事前に保健所や消防署との協議やリフォームなどが必要となるので全体として3か月から6カ月ぐらいは見て置いた方がいいかもしれません。
メリット | デメリット |
・一日単位での宿泊が可能 ・全国どこでも行うことができる(用途地域の制限有) ・大手国内旅行サイトへ宿の登録が可能 ・宿の信頼感がアップして集客につながる |
・必要な設備が多く、費用と時間がかかる ・場所によっては許可が取れない場合がある |
特区民泊
特区民泊とは、国が指定した国家戦略特区の中で行う民泊です。
場所限定で旅館業の許可よりも簡単に民泊が始められる制度ですね。特区民泊の場合には「外国人滞在施設経営事業の認定申請」をすることになります。
特区民泊の認定申請の仕方は以下の記事を参考にしてください。
参考記事: 特区民泊(外国人滞在施設経営事業)を始めるための9つのステップ
現在、特区民泊ができる場所は東京都の大田区と大阪府の一部の地域のみですが、10月末からは大阪市、2017年には北九州市でも可能となります。今後こうした地域が増えて行く予定になっています。
特区民泊では旅館業法が適用除外となり、特区民泊用の独自の規定に従って民泊を始められます。
旅館業の許可を得る場合にはトイレの数や洗面所の給水栓の数、用途変更の手続きといった厳しい規定がありますが、特区民泊の場合こうした規定が除外されるので費用をそれほどかけずに民泊を始めることができます。
また地域によっては住宅専用の地域で始めることができます。
特区民泊でネックとなるのは最低宿泊日数が定められていることです。現在では最低6泊7日以上の宿泊客しか泊めることができません。このため現在ほとんど活用されていない制度です。
しかし、政府がこれを最低2泊3日からに緩和するとの姿勢を出しましたので今後の活用が多いに期待される制度です。
メリット | デメリット |
・旅館業の許可より簡単に始められる ・始めるための費用が割安 ・住宅専用地域でもできる場合がある |
・最低宿泊日数が決められている ・できる地域が限られている ・大手旅行サイトに登録できない |
新法による民泊
3つの制度の中で一番手軽に始められるのがこの制度の特徴です。
基本的には施設に管理者を置いてインターネット等の届出だけで民泊を始めることができる制度です。
管理者の設置の仕方によって「家主居住型」と「家主不在型」に分かれますが、とにかく住人か第3者がきちんと管理することで民泊ができるようになります。
まだ法案が国会に提出されていないため新法による民泊をすることはできませんが、2017年には法案が成立する予定です。
ただし新法による民泊に関しては営業日数の制限が設けられる予定です。閣議決定では180日以下の制限を設けるとの決定がありましたが、不動産業界、ホテル・旅館業界双方との対立がありこの点に関してどうなるかは分からない状況です。
新法による民泊は事業としてではなく、国際交流を楽しむために外国人を泊めてあげたり、イベント等で宿泊施設が足りなくなった時に部屋を貸し出すといった使い方が向いているかもしれませんね。
メリット | デメリット |
・とにかく簡単に民泊ができる ・住宅専用地域でも可能 ・設備費用がほとんどかからない |
・営業日数の制限がある ・条例で制限されてしまう場合がある |
4.民泊と不動産賃貸の違い
部屋を貸すなら賃貸じゃないの?
と思う方もいるでしょう。
ただ、民泊と不動産賃貸に間には決定的な違いがあります。
それは、「生活の本拠がその部屋にあるかどうか?」ということです。
賃貸の契約として認められるためには、部屋を借りる人の生活の本拠地として使えるかどうかが判断基準になります。
具体的にいうと1カ月以上の期間が必要になります。
実際に少し前までは「定期借家契約」という期間が定められた賃貸で一日単位で部屋を貸し出している人もいました。しかし、現在では厚生省生活衛生局指導課長通知によってこうした行為は認められないため旅館業の許可を取得して運営をすることが求められます。
定期借家と民泊について詳しくは以下の記事を参考にしてみてください。
参考記事: 一日単位の賃貸借契約は可能なのか?
逆にいえば1カ月以上の長期の貸し出しであれば旅館業の許可がなくても定期借家契約として貸し出すことはできることになります。
5.無許可で民泊をすると摘発を受けます
基本的には民泊を運営するためには許可や認定を受けなければなりません。
見つからなければ大丈夫だろうとやってしまう人も多いんですが、保健所の監視が近年厳しくなっており、行政指導を受けるケースが増えています。
仲介サイトの監視や近所の通報なので見つからずにやるのは難しいのでやめましょう。
過去の民泊施設の摘発については以下の記事を参考にしてみてください。
参考記事: 無許可は危険!「民泊」逮捕・摘発事例
参考記事: 大阪で無許可民泊が摘発!大丈夫だろうはもう通用しない!
参考記事: 【民泊】東京でもついに違法業者が摘発されました!
無許可で民泊を行っているとまず行政指導という形で保健所から通知を受けたり、職員が施設を訪ねてきたりします。
行政指導を受けた段階でいきなり逮捕されるようなことはありませんが、無視して営業を続けていると旅館業法違反で逮捕や書類送検をされることになります。
社会的信用を著しく失うので行政指導を受けた場合には素直に従い、許可や認定を取得するか、営業をやめるかのどちらかを選ぶことになります。
6.まとめ
民泊の制度はまだ法整備が整っていない状態で今後どうなっていくかもはっきりしない部分があります。
現状無許可で民泊を行うのは非常に危険な行為となっています。
民泊に関する正しい知識を身につけて楽しい民泊運営をしていきましょう。