10月12日全国でホステルを展開している大手のホステルグループ「カオサン」の経営者が宿泊料を無料にする代わりに働かせていたとして経営者らが逮捕されました。
宿泊料を無料にする代わりに宿の掃除などの手伝いをする仕事はフリーアコモデーション(略してフリアコ)と呼ばれています。
海外ではバックパッカー等がこの形態での仕事を普通にしていたりしますね。日本のゲストハウスでも多くの宿がこの仕組みを利用しています。
ですが日本では就労ビザを持たない外国人を働かせてしまうと違法行為となってしまいます。
ゲストハウスの経営者がこのような事態におちいるのを防ぐため、入管業務に関わる申請取次行政書士として解説してみたいと思います。
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フリーアコモデーションで経営者が逮捕
今回逮捕されたのは東京、京都、大阪、北海道などホステルを展開するカオサングループの経営者と実際に働いてたマレーシア人の女性の5人です。
カオサングループといえばゲストハウス業界では知らない人がいないぐらい有名なところです。日本一のゲストハウスを決める「JBLゲストハウスアワード」でも経営する宿が何度も選ばれています。
びっくりされた業界の方も多いのではないでしょうか。
カオサングループのホームページ上ではベッドメイクや掃除の仕事を一日3時間従事すると無料で宿泊できると掲載して、就労ビザをもたない外国人を募集していました。
日本国内で就労ビザを持たない外国人を働かせると出入国管理法違反となります。この容疑で今回は経営者と働いていた外国人が逮捕となりました。
フリアコの法律上の問題点
フリアコとは
フリーアコモデーション(Free Accommodation)を略してフリアコといいます。
直訳では無料宿泊という意味ですが、ゲストハウスの募集などで使われる時には居住スペースを無償で提供してもらう対価として宿の清掃、夜勤業務などの仕事をしてもらうことを指しています。
経営者は人件費をかけずに日々のルーチンワークを処理でき、宿泊者側は宿泊費を浮かせることができるといういわゆるWin-Winの関係が成り立っています。
フリアコと労働基準法
フリアコとは「丁稚奉公」と似たシステムです。
人を雇う場合に日本では労働基準法という法律が存在しており、一日の労働時間数や休日、そして最低賃金は守らなくてはいけません。
業界によっては旧態依然として丁稚奉公の制度などがまだまだ存在しますが、これは法律違反となってしまいます。
ゲストハウスがフリアコを行う場合には、雇用契約としてみなされる行為は厳禁であくまでもボランティアスタッフとして人を募集しなければないません。
雇用契約としての労働者と有償のボランティアスタッフを区別するには実態を見て判断されるのでなかなか区別が難しいと思います。支払い内容によっては賃金と解釈される可能性もあります。
専門的な知識をもつ社労士の方に相談するといいでしょう。
フリアコと入管法
ゲストハウスのフリアコでは外国人の募集も多くみられます。しかし、就労ビザやワーキングホリデービザを持たない外国人を雇うことは厳禁です。
外国人が日本で働くためには「在留資格」(=就労ビザ)が必要になります。日本の在留資格には27種類あり、このうちゲストハウスで働くためには、「技術・人文知識・国際業務」が考えられます。
ただし日本では宿の掃除や深夜対応などの単純労働だけで在留資格がおりることはないです。
現在日本が受け入れているのは高度な専門性をもつ人材のみで、通訳や外国におけるマーケティングなどその国の人でなければならない理由を求められます。
入国を管理している法務省では日本人が代わりにできることは日本人を雇いなさいというスタンスです。
以上のことから現在のゲストハウスのフリアコの形態で外国人を雇うことは入管法違反になる可能性が極めて高いので気を付けなくてはなりません。
フリアコとワーキングホリデー
ゲストハウスで外国人を雇うのに現実的なのはワーキングホリデービザで来日している外国人でしょう。
日本では以下の16カ国・地域との間で制度を導入しています。
- オーストラリア
- ニュージーランド
- カナダ
- 韓国
- フランス
- ドイツ
- イギリス
- アイルランド
- デンマーク
- 台湾
- 香港
- ノルウェー
- ポーランド
- ポルトガル
- スロバキア
- オーストリア
ワーキングホリデービザを取得している相手国・地域の青少年は合計で年間1万人にのぼっています。
ゲストハウスの雇用としてはこうしたワーキングホリデービザを持つ青少年が対象となるでしょう。
ゲストハウスで外国人を雇うには
ゲストハウスで外国人を雇うには以下の2つの方法があります。
- 就労できる在留資格を持つ外国人を雇う方法
- 外国人の就労できる在留資格を取得する方法
就労できる在留資格をもつ外国人を雇う
こちらの方法についてはパスポートや在留資格カードをみれば確認できます。
雇用しようとする外国人が
日本に滞在する資格があること
と
日本での就労が許されていること
を確認することが重要です。
在留カード確認のポイント
法務省より雇用の際の在留カードの確認についての資料が以下のものです。
基本的には
表面で就労制限の有無を確認
↓
「就労不可」の記載がある場合は、裏面で「資格外活動許可欄」を確認します
資格外活動許可とは許可された在留資格に応じた活動の以外に収入を伴う事業や報酬を受ける活動を行おうとする場合にされる許可です。
例えば、留学生は在留資格「留学」で日本に滞在しますが「留学」はあくまでも日本で勉強するための資格なので、アルバイトをすることができません。しかし、入国管理局からの許可をもらえば資格外活動の許可として
アルバイトができるようになります。
資格外活動許可欄の記載には以下の2つがあります。
- 許可(原則週28時間以内、風俗営業等の従事を除く)
- 許可(資格外活動許可書に記載された範囲内の活動)
記載された条件の範囲内であれば雇用することができます。資格外活動許可書の記載がある場合には、きちんと資格外活動許可書の原本で記載内容を確認しましょう。
外国人の就労できる在留資格を取得する
ゲストハウスが在留資格を持たない外国人を雇用する場合は、以下の3つのうちのどれかの申請を行います。
- 海外から呼び寄せる 在留資格認定証明書交付申請
- ビザ更新 在留期間更新許可申請
- ビザ変更 在留資格変更許可申請
海外在住の人材を呼び寄せる場合には、「技術・人文知識・国際業務」や「技能」の認定申請、外国人留学生や他の職種をしていた外国人を雇う場合にはビザの変更の申請を行います。
申請は管轄の入国管理局に対して行います。
就労ビザ申請について
申請場所
最寄りの入国管理局へ申請します。ビザ申請の場合はそれぞれの地域ごとに管轄が以下のように定められています。
申請人
申請は外国人本人以外もすることができます。
本人の代わりに申請書を提出できるのは以下の者です。
- 外国人社員を受け入れる会社の職員
- 地方入国管理局に届け出た弁護士、行政書士
- 16歳未満の子供の申請における両親
必要書類
揃える書類は会社の実態を証明するための書類と外国人の本人性や経歴を証明する書類に別れます。
会社側が揃える書類については、会社の規模で異なっており、上場企業のような大きな企業ほど集める書類は少なくてすみます。
一般的な中小企業の場合は
- 登記事項証明書
- 定款のコピー
- 会社案内またはHP
- 直近年度の貸借対照表・損益計算書のコピー
- 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表
- 申請理由書
- 雇用契約書
などが必要になってきます。
外国人側には
- 大学または専門学校の卒業証明書
- 成績証明書
- パスポートのコピー
- 履歴書
- 日本語能力を証明する書類
- 資格の合格証のコピー(職務に関連する場合)
などが求められます。
必要書類の詳しい内容は入国管理局のページで確認してください。
またこれがあれば在留資格について認定されるというわけではないので、その他に資料として役立つ書類があればできる限り集めましょう。
申請のポイント
ゲストハウスで外国人を雇う場合にポイントとなるのは、掃除や雑用などの単純労働のための雇い入れではダメだということです。
ホテルの運営や管理業務として営業やマーケティングや人事管理といった業務に従事してもらうようにしてください。
それを証明するための本人の大学での専攻や経歴などで証明できる書類があればすべてつけてください。
また給料も日本人並みかそれ以上支払うようにしてください。
外国人を違法に雇った場合の罰則は厳しい
外国人を違法に雇ってしまうことを「不法就労」といいます。
不動就労には以下の3つのケースが考えられます。
- 不法滞在者を雇う
- 入局管理局の許可なく雇用する
- 入国管理局からの許可の範囲を超えて働かせる
1については、密入国者や滞在期限が過ぎたものを雇う場合です。
2については、留学生が許可を得ずにアルバイトをした場合、観光目的で入国したものを働かせた場合などがあげられます。
3については、通訳やコックなどを掃除などの雑用の仕事だけさせることが考えられます。
不労就労をさせてしまった場合には事業主も処罰の対象となる場合があり、
3年以下の懲役、300万円以下の罰金
が科せられます。
これは外国人が不法就労者であることを知らなかった場合でも、在留カードを確認しなかった場合には処罰を免れません。
不法就労が判明した場合には、事業主は逮捕され、働いている外国人については国外強制退去となり、再び日本へ入国することはほとんど不可能になるでしょう。
ですので外国人を雇う場合には不法就労に細心の注意を払わなければなりません。
また雇った場合にもきちんとハローワークの届出をしないと30万円以下の罰金を科せられます。
まとめ
ゲストハウスがフリアコを使って外国人を雇うためにはかなり法律の部分で神経質にならなければなりません。
コンプライアンスを軽視していると今回のカオサングループの経営者のようになってしまいます。
実際に同様の形態で運営している施設は数多くあると思うので今のうちに宿の運営に関して法的なチェックを専門家へ頼むことをおすすめいたします。