平成28年6月6日にとある上場企業が子会社の行う民泊関連事業から撤退することを発表しました。
その上場企業の子会社は民泊運営支援等のサービスを行っていました。その支援していた「運営者」が旅館業法違反で摘発され、運営支援のサービス事業者にまで警視庁の捜索・差し押さえがなされたことが原因です。
今回は運営支援事業者に捜索・差押がなされた事件について紹介したいと思います。
ジャスダック上場企業にも捜索の手が入る
2016年2月よりとあるジャスダック上場企業は民泊運営者に対する運営支援などのサービスをテスト運用していました。
そのサービスを利用していた一部の「運営者」による旅館業法違反の事件に関連して、子会社にも警視庁から捜索・差押がなされました。
民泊を行っている「運営者」ではなくて、その支援を行っている企業に捜査が及んだのは初めてのケースではないでしょうか。
旅館業許可を取得して民泊を運営している物件は少なく、民泊代行業を行っている企業はどこも似たようなの状況です。今回の事件によって全企業がかなりのリスクを抱えている状態になりました。
「許可がなくても大丈夫だろう」で民泊を運営するのも、それに関わるのもかなり危ない行為です。
私も仕事で関わることがあるのですが、上場企業や規模の大きな会社はコンプライアンスにかなり気を使っています。それでもこの結果ですから、専門的な知識なく参入するのはやめておいた方がいいでしょう。
民泊関連事業から撤退するもう一つの理由
上記企業は民泊撤退を決めた理由として以下のようにリリースで発表しています。
民泊については、一部の自治体において条例の整備等行われておりますが、多くの自治体で条例が整備されていない状況であり、法令整備までには一定の時間を要するものと考えております。
以上のことから、当社といたしましては、法令遵守を第一に掲げていることから、民泊に関連する事業から撤退することを決定いたしました。
法律や条例の整備が整っておらず、民泊運営において法令違反のリスクを避けきれないために民泊関連事業からの撤退を決めたようです。
ただ、法令遵守という点以外にも撤退を決めた要因があると思います。
それは、ご存じの方も多いと思いますが、民泊解禁に関する営業日数の上限を定めた閣議決定です。
不動産業界では民泊関連事業への参入の流れがありましたが、これは民泊完全解禁に対して一定の見通しがあったものと思われます。現実来年度には、特区において1泊から宿泊を認めるだとか、住宅街でも解禁されるようになるといった情報が出回っていました。
ただ民泊に関して事件やトラブルがあったので世論が民泊反対に傾いてしまい民泊完全解禁とはいきませんでした。
民泊に参入する業者の計画は修正を余儀なくされたでしょう。
今回の撤退も法令遵守だけでなく、ビジネス的な面での判断が大きいはずです。
同様の理由で、今後撤退する企業も増えてくるのではないでしょうか。
代行業者は営業施設の適法性をチェックする必要がある。
今後、民泊代行業者は施設が適法に運営されているか厳しいチェックをしていかなければなりません。
現在は多くの施設が違法な状態での営業を行っています。少し前のグレーゾーンと言われていた時代とは環境は全く変わっています。
民泊代行業者においてもきちんとコンプライアンスを高めていく必要があるでしょう。