簡易宿所営業や旅館営業の許可申請の際に意外と見落としがちなポイントとして「階段」があります。
実は建築基準法上、住居用の階段と旅館・ホテル用の階段の規定がずれている点があります。
あまりチェックされないポイントですが、階段まわりの改修を命じられると多額の費用がかかってしまいます。
そのようなことがないよう、物件選びのポイントとなる階段の規定についてまとめてみます。
Contents
2系統の直通階段が必要となる場合
通常の建物にも2系統の直通階段が必要となる規定はあるのですが、ホテル・旅館などは不特定多数の人が使う建物なので階段に関してより安全性の高い基準が定められています。(建築基準法施行令第121条)
ポイントとなるのは、
- 客室の床面積
- 主要構造部が耐火構造又は不燃材料であるか
という点です。
この2つによって2系統の直通階段の設置が求められるかどうかが決まります。
基本的には
その階の客室の面積が
主要構造部が耐火構造又は不燃材料である建物 200㎡超
その他の建物 100㎡超
であるものに関しては2系統の直通階段の設置が求められます。
また、6階以上の階に客室を設ける場合には例外なく2系統の直通階段が必要です。
共同住宅と共通の規定なので、マンションなどで気にする必要はありませんが、戸建て住宅を宿泊施設に転用する際には注意が必要です。
屋外に直通階段を設ける場合には、木造はダメですが、例外的に、準耐火構造のうち有効な防腐措置を講じたものであれば使用が可能です。(建築基準法施行令第121条の2)
3階以上の建物では、階段部の防火区画に注意
準耐火建築物以上の耐火性能をもった建物で、3階以上の階に居室や客室をもうける場合には、原則、階段部分に防火区画が必要となります。(建築基準法施行令第112条第9項)
つまり、階段部分と部屋の部分をすべて防火扉や防火シャッター等で区切る必要があります。
これは火災発生時に、階段部分が煙突のように煙を上部を伝えてしまい、重大な事故が起こりやすいことから設けられている規定です。
ただし、住宅用に緩和規定があり、
3階建て以下の建物で、延べ面積が200㎡以内の一戸建て住宅、長屋、共同住宅
の場合には、この防火区画が不要となっています。
ゲストハウス・民泊などに転用する際にはこの緩和規定が適用されなくなりますので、この防火区画(竪穴区画とも呼ばれます)に注意しなくてはなりません。
住宅用の階段と旅館・ホテル用の階段の寸法は違う
意外に思われるかもしれませんが、実は階段の寸法も建物ごとに細かく建築基準法で定められています。
旅館・ホテルの階段の寸法と住宅の階段の寸法を比較すると以下のようになります。
旅館・ホテル | 旅館・ホテル(直上階の居室の床面積の合計が200㎡を超える場合) | 住宅 | |
階段の幅 | 75cm以上 | 120cm以上 | 75cm以上 |
踏面(ふみづら) | 21cm以上 | 24cm以上 | 15cm以上 |
蹴上げ(けあげ) | 22cm以下 | 20cm以下 | 23cm以下 |
この階段の寸法の違いも住宅から旅館・ホテルに転用する際には注意が必要になってきます。
簡易宿所営業の許可申請をする際には一度メジャーなどで測っておいた方が無難です。
避難経路として客室から階段までの距離も重要
ホテルなどの大きい建物になると、客室から階段までの距離が問題となることもあります。
あまりに客室から階段まで離れてしまうと火災の避難の際に支障があるためです。
階段までの距離に置いてポイントとなるのは
- 建物の主要構造部が耐火構造または不燃材料か
- 15階以上か
- 窓があるか
- 準不燃材料以上で内装をしているか
という点です。
この3点によって客室から階段までの距離が決定されます。
主要構造部が耐火構造または不燃材料でない建物の場合はすべて
無窓居室 30m以内
その他 40m以内
となっています。
主要構造部が耐火構造または不燃材料の建物の場合は以下の表のようになります。
14階以下 | 15階以上 | |||
準不燃材料以上で内装 | 準不燃材料以上で内装 | |||
無窓居室 | 30m以内 | 40m以内 | 20m以内 | 30m以内 |
その他 | 50m以内 | 60m以内 | 40m以内 | 50m以内 |
階段までの距離に規定はかなり大きな建物で問題となってきます。
通常はあまり気にする必要はないかもしれません。
まとめ
階段一つでも住宅からホテル・旅館に転用する場合は、注意しなければならない点が多いことがお分かり頂けると思います。
改修がもとめられるとやっかいな部分であるので事前にチェックしておくべきポイントです。
ここまで細かく指摘がある自治体は少ないかもしれませんが、実際に許可申請の途中で指摘があった例もあるようです。
行政の許可を得て民泊運営を考える際の物件選びには細かいチェックも必要ですね。
民泊に関しての他のチェックポイントが知りたい場合には、過去記事の
参考記事: 民泊に関する4つの法律。違法とならないためホストが知っておくべきこと
参考記事: これさえ見れば旅館業許可は大丈夫!民泊関連法令リスト
参考記事: 基本から丁寧に解説!合法民泊、Airbnbのための物件探し方マニュアル
あたりを参考に読んでみて下さいね。