簡易宿所営業の許可を取得する際には客室に採光用の窓が必要になることがほとんどです。
建築基準法上ホテルの客室では換気設備を設けた場合においては窓が不要となる(建築基準法第28条)という規定があるので勘違いしやすいところです。
窓が必要になる理由は各自治体の旅館業法の条例に書かれていることが多いからです。
オフィスなどの事務所を宿泊施設に変更する「オフィステル」では特に注意が必要です。
簡易宿所営業の客室の窓の規定について書いてみたいと思います。
Contents
客室にはどんな窓が必要か?
まず条例に関係なく国が旅館業許可における判断の目安として使われる「衛生等管理要領」の中で客室の窓についての規定があります。
なお、和室の採光面積は、幅員0.9m以上の縁側を隔てるときは、その採光面積のおおむね2分の1を有効面積とみなし、随時開放し得るふすま、障子類によって仕切られた2室の場合、本号の適用については1室とみなすこと。
(旅館業における衛生等管理要領より)
国から許可をするにあたって客室の窓についてはこのように指導して下さいとのお達しがでているわけです。
例えば、台東区の旅館業法施行条例では
イ 1客室の規則で定める構造部分の合計床面積は、政令第1条第1項第2号イ又は第3号に規定する面積以上であること。
ロ 睡眠、休憩等の用に供する部屋は、窓からの採光が十分に得られる構造であること。
といった規定があります。
客室に窓の設置が求められることがわかりますが、どの位の大きさの窓かまでは定められていません。
この時に国の指導基準を使って客室の床面積の8分の1以上の窓の面積をしておけば特に問題がないでしょう。
ただ、管理要領というのは強制ではなく法的拘束力を持ちませんので、採光の取れる窓があれば8分の1以上なくても許可は問題なく取れます。
実際に私が許可申請をしたケースでも8分の1以下の窓でも許可が取れています。
他の区では条例で詳しい窓の面積まで定めている場合があります。
新宿区の場合は旅館業法施行規則において
第16条 条例第8条第4号イ(条例第9条第3項、第10条第3項及び第11条第3項において準用する場合を含む。)の規定により定める面積は、有効面積の10分の1とする。
と定めています。
この場合には、きっちりと規定をクリアしなければ簡易宿所営業の許可を取得することができません。
条例に数値基準が定められている場合には、特に注意が必要です。
このように、客室の窓の大きさに関しては各自治体によってまちまちです。
それぞれの自治体の規定がどうなっているかを確認しましょう。
オフィステルで窓に注意する理由
オフィスとして使っていた事務所を宿泊施設に用途を変更するときには窓の有無が問題となることが多いです。
実際に「事務所」については建築基準法上窓の設置は求められていません。
すごく小さな窓しかない事務所やまったく窓がない事務所は結構多いです。
こうした事務所を賃貸して宿泊施設を始めようとすると窓の規定で大失敗することになります。
窓がない「事務所」の物件は結構安く借りられますのでこのミスをやってしまいがちなんですけどね。
戸建て物件であれば費用をかければ窓を増やすことも可能ですが、商業ビルの場合あとから窓を増やすのはかなり厳しいです。
また、賃料の安い地下の物件の場合も簡易宿所営業の許可を取ることができません。
ビルのテナントを借りてゲストハウスを始める方は窓の規定に注意が必要ですね。
窓の面積の測り方
十分な広さの窓がついた物件なら特に問題になりませんが、窓の面積が規定ぎりぎりの時には窓の面積の測り方にも注意が必要です。
窓の面積は
・サッシを除いたガラス面
で測ります。
もともと窓が求められる理由は採光にありますから当然なんですが、いざ測るときになるとどこを測るんだろうと悩みますよ。
また採光が十分取れない窓も面積にカウントされませんので隣にビルが建っている場合などは注意が必要ですね。
まとめ
簡易宿所営業の客室には採光用の窓が必要です。
物件選びの際はどこに窓があってどこに客室が作れそうかということをイメージしましょう。